2022.01.20
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?
山口周
■要約
「論理、理性」に軸足をおいたサイエンス重視の意思決定では、今日の不安定な世界においてビジネスの舵取りをするのが困難である。エリートは極めて功利的な目的のために「美意識」を鍛えている。
■学び
・多くの人が分析的・論理的な情報処理のスキルを身につけた結果、世界中の市場で「正解のコモディティ化」が発生している。
・全体を直感的に捉える感性と、「真・善・美」が感じられる打ち手を内省的に創出する構想力や創造力が求められる。
・「理性」が「正しさ」や「合理性」を軸足に意思決定するのに対して、「感性」は「美しさ」や「楽しさ」が意思決定の基準となる。
・論理的にシロクロつかない問題について答えを出さなければならないとき、最終的に頼れるのは個人の「美意識」しかない。
・欧州のエリート養成校では、特に「哲学」に代表される「美意識の育成」が重んじられてきた。
・経営というものは「アート」と「サイエンス」と「クラフト」が混ざり合ったもの。「クラフト」は地に足のついた経験や知識をもとに、「アート」が生み出したビジョンを現実化するための実行力を生み出す。
・意思決定がサイエンスとクラフトに寄ってしまうのは、アートにアカウンタビリティがないため。(アカウンタビリティとは、「なぜそのようにしたいのか?」という理由を説明できるということ)
・サイエンス型の経営は「熱いロマン」よりも「冷たいソロバン」を優先する。
・実際に自ら芸術的な趣味を実践している人ほど、知的パフォーマンスが高いという統計結果もある。
・ビジョンはそれを耳にした人をワクワクさせ、自分もぜひ参加したいと思わせるような「真・善・美」がなければならない。
・「美意識」という点において、日本はフランスに並んで、世界最高水準の競争力を持っている。
・テクノロジーをコピーすることは容易だが、世界観とストーリーは決してコピーできない。
・目の前でまかり通っているルールや評価基準を相対化できる知性を持つ。
・セルフウェアネスとは、自分の状況認識、自分の強みと弱み、自分の価値観や志向性など、自分の内側にあるものに気づく力のこと。
・「偏差値は高いけど美意識は低い」という人に共通しているのが、「文学を読んでいない」という点。
・リーダーシップと「詩」には非常に強力な結節点がある。それは「レトリック(修辞)が命」であること。
■アクション
・美術館に行く。
・文学を読む。(ドストエフスキー、夏目漱石)