川さんの読書記録

25歳。読書の備忘録として、週1冊ほど。

『ヒトの壁』養老孟司

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ヒトの壁

2022.02.06
ヒトの壁
養老孟司

■要約
人がヒトであるという実感から問い直した一冊。人生そのものが不要不急ではないか、それでも生きる価値とは。84歳の知性が考え抜いた人間論。

■学び
・夜には死ぬという前提で毎日を始める。コロナは死という生の前提を各人の目前にもたらした。

・文化系の人なら「心は一人一人違うだろうが」と思うかもしれない。数学者の津田一郎は一言で回答する。「それは数学的には誤差に過ぎない」

・川の流路、山岳の形成や崩壊といった地方の変化から生物の進化まで、全ての動きは「最も抵抗の少ない経路を通って変化する」。

・現代では自然科学教、工学技術教が正統と化し、それが自己隠蔽する。「コンピュータが囲碁の名人に勝った」と書かれることがある。本当はプログラムを書いた技術者と、彼を雇った会社が勝ったのだが、誰もそれを指摘しない。

・自己言及の矛盾。「私はウソしか申しません」

・ヒトは適応性の高い生き物で、AI社会に適応してしまう可能性が高い。実はAIが人に似てくるのではない。ヒトがAIに似てくるのだ。

・「ああすれば、こうなる」は、理性の世界、意識の世界、予測と統御の世界である。ところが世界は「こうなった」という結果の集積であって、そこで何かが問われるとすれば、一体「どうしようとしたのか?」という問いであろう。

・最近の脳科学では、喜怒哀楽は「社会的現実」だと言われている。みんなが一致して怒ったり、笑ったりするのは作られた現実だというのだ。